夜桜と朧月
情景
Ⅰ
バレンタインは、本当に久しぶりに気合いを入れて頑張ってみた。
あんなに気合いを入れたのは、恐らく高校の最後の年以来じゃなかったかと思う。
刻んだチョコを湯煎にかけたり小麦粉を振るったりしていると、自然に頬が綻ぶ。
というか、ニヤけてくる。
ラッピングも、咲希と多希と一緒に選んだ。
二人をショップに連れて行って、二人が一番良い反応を示した包装紙とリボンを買ってきた。
キラキラとラメが入ったピンクの包装紙とシルバーのリボンを二人はいたくお気に召したようで、会計をしようとしてもなかなか離さなかった。
薫、喜んでくれるかな?
中身はチョコケーキなんだけど。生クリームとココアが隠し味の濃厚なヤツ。
味に不安が残ったからちょっと味見をしたら、うん、悪くはない味だと思った。