夜桜と朧月

とにかく会社には明日相談する事にして、その夜のうちに私は姉の元へ向かった。




夜にも関わらず、産婦人科の病棟へはすんなり案内して貰った。




久しぶりに見る姉の顔は、すっかり浮腫んでいて、そして青白かった。起き上がって月に照らされる姉の横顔は儚げで、今から成される【出産】という大仕事に向けての体力は殆ど無いように思えて仕方がなかった。




「真愛、久しぶりだね」




ぼんやりと笑う姉に何故か無性に腹がたった。




一人の体じゃないのに。自分の体も、子供の命も守らなきゃいけないのに。なんでこんな事になったのよ?




「……お腹の赤ちゃんね、双子なんだよ。でね、双子だとかかりやすいんだって。妊娠中毒症って」


「……そうなの……?」



私の怒色を見てか、姉が取り繕うかのように言う。



「お腹の中に、二人分の負荷がかかるから、血圧も上がりやすいし浮腫みやすいの。でも、お医者さんにも怒られた。ここまで酷くなる前に、なんでもっと早く来なかったのか、って」



姉の事だから、きっと無理して我慢したんだろう。



お義兄さんに心配かけさせないように。



いつものように、早起きしてお弁当を作り、夜遅くまで起きてその帰りを待って……。




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