夜桜と朧月
綺羅
Ⅰ
桃の節句は日曜日に当たったため、皆で何処かへ出掛けようかと話していたら、玄関からインターフォンが鳴った。
仕事が休みだった薫のご両親が、お土産を持参して訪ねて来てくれたのだった。
前以て教えて貰っていたら、人数分の食材とか用意してたのに……。
お茶を用意するためにキッチンへ立とうとしたが、ご両親に場に残るよう止められた。
差し障りのない挨拶から、お互いの仕事の近況、忙しさや不況に対する愚痴など、とりとめもない会話が続く。
私がここにいる意味、あるのかな?
家族の団欒に邪魔をしている居心地の悪さに肩身を狭く感じた時、お母さんがこの日、本題にしたかったであろう話題を切り出した。
「あの子の事を忘れろとは言わないの。だけど、いつまでも真愛ちゃんに甘えている訳にもいかないでしょ?真愛ちゃんは若いし、まだ自由に遊びたいとか、キャリアを積みたいとか、そういう経験も欲しいと思うのね」
お母さんの話を聞いていた薫の顔が、段々険しくなってくる。
「……何が言いてーの……!?」
一呼吸おいたお母さんが、薄いアルバムを一冊、取り出した。
「……相手のお嬢さんは、あんたに子供達がいても、再婚でも構わないと言ってくれてるの。私の職場の部下なんだけど」
……薄いアルバム。お母さんからの斡旋。
それは、つまり………。
「どう?お見合い、してみない?」
愕然として、目の前が真っ暗になった。
仕事が休みだった薫のご両親が、お土産を持参して訪ねて来てくれたのだった。
前以て教えて貰っていたら、人数分の食材とか用意してたのに……。
お茶を用意するためにキッチンへ立とうとしたが、ご両親に場に残るよう止められた。
差し障りのない挨拶から、お互いの仕事の近況、忙しさや不況に対する愚痴など、とりとめもない会話が続く。
私がここにいる意味、あるのかな?
家族の団欒に邪魔をしている居心地の悪さに肩身を狭く感じた時、お母さんがこの日、本題にしたかったであろう話題を切り出した。
「あの子の事を忘れろとは言わないの。だけど、いつまでも真愛ちゃんに甘えている訳にもいかないでしょ?真愛ちゃんは若いし、まだ自由に遊びたいとか、キャリアを積みたいとか、そういう経験も欲しいと思うのね」
お母さんの話を聞いていた薫の顔が、段々険しくなってくる。
「……何が言いてーの……!?」
一呼吸おいたお母さんが、薄いアルバムを一冊、取り出した。
「……相手のお嬢さんは、あんたに子供達がいても、再婚でも構わないと言ってくれてるの。私の職場の部下なんだけど」
……薄いアルバム。お母さんからの斡旋。
それは、つまり………。
「どう?お見合い、してみない?」
愕然として、目の前が真っ暗になった。