夜桜と朧月
そろりと近づいて顔を撫でると、ガッと腰を掴まれてガッチリ動きを封じられてしまう。

「……もう。何?」

「……ヤりてー……」


は?まだ昼間だし!!

子供達絶好調に起きてるし!!


「今、ムリ。夜でいいじゃん」


それでも薫は私の胸の中で嫌々と首を振る。


あぁぁぁもう!鬱陶しい!



そりゃね、薫がお見合いだなんて私だって絶対嫌だけど、でも断ってくれたじゃない。


……って考える私は、あんまりお気楽過ぎるのかな?


「ね。子供達の折角の初節句だよ?パパがそんなんじゃ、咲希も多希も可哀想だよ。機嫌直して?夜……サービス、する、から……」


ええい、子供達のためだ。これで薫の機嫌が直るなら文字通り一肌でも脱いでやろうじゃないか。


それ以上のサービスはしないけど!


「……絶対………?」

「うん。多分」


多分って何だよ、と苦笑した薫がいつも通りに子供達の元へゆっくり歩いて行ったから、ようやく機嫌が直ったのだと安堵した。



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