夜桜と朧月
子供達は自分達が好きなだけ食べると、『もう、いらないでち!』と言うように、べーっと舌を出して満腹だと示した。


口の回りを拭いてやってから、冷めてしまったうどんを啜る。

あんまり美味しく感じない。



多分、薫が笑っていないから。



私がようやく食べ終わり、皆で席を立つと、咲希が乗ったベビーカーを押して、薫が再びずんずん歩いて行く。



薫達に追い付こうと、多希が乗ったベビーカーを必死に押して早足でその後を追う。



ホワイトデーのお返しって言ったけど、私、欲しいものとか聞かれてないし。

高価な物なんか要らないから、薫が笑って、私にくれる物ならなんでも良いのに。



とある店の前で、薫はようやく立ち止まった。


そこは海外の各ブランドを扱う、高級感漂う店構えの、如何にも敷居が高いです的ブランドショップ。


「入るぞ」



やだ、こんなとこじゃなくていいよ!!


ボディーエッセンスとかちょっと高いシャンプーとか、そんなのでいいよホワイトデーのお返しなんて!!

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