夜桜と朧月
あわあわしながら店に入ると、薫は女性の店員に何か話しかけている。



その女性店員の「此方へどうぞ」の声に促され、案内されたのは――――。


ペアリングのコーナー。



「どれがいい?あんまり予算は高くないけど」



白々しく言う薫に唖然として、「何で!?」としか言えなかった。



だって、薫はもし結婚しても、自分は指輪はどっちでもいいなんて言ってたじゃない。

なのに、何でペアリング……?



「虫除け。お前も俺も。一緒のをつけてれば、見合いしろとも言われねーし、フリーだとも思われないだろ。だから」



あっさり言ったけど、薫の顔が真っ赤になってる。



楓の事も、お見合いの事も、本当に薫は嫌だったんだ……。

だから、あえてこうしてお互いに柵を作ることで、安心しようとしているのか……?


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