夜桜と朧月
だが。
出産中に上昇した血圧。
医師は、心拍が弱まった母体よりも、子供の命を優先した。
姉は、元気な双子を産み落とした後、還らぬ人となってしまった。
火がついたように泣く二人の赤ん坊を抱かせて貰ったとき、私の頬を濡らしていたのは悲しみの涙だった。
母親の温かい乳の味を知る事なく育つ、この子らの将来、そして我が子を胸に抱けなかった、姉の無念……。
やるせなさに胸が一杯のまま、姉の葬儀が終わっていた。
お義兄さんのご両親も駆けつけてきたが、私は赤子達を片時も手離さなかった。
姉の忘れ形見。
姉が安心してこの子達を預けるとすれば、私以外にいないように思えたのだ。
本来ならばお義兄さんという片親がいるにも関わらず、私はその考えに固執した。
子供らの名前は、かねてから姉が望んでいた「咲希」と「多希」に決まった。
姉らしい、可愛い名前だと思う。
出産中に上昇した血圧。
医師は、心拍が弱まった母体よりも、子供の命を優先した。
姉は、元気な双子を産み落とした後、還らぬ人となってしまった。
火がついたように泣く二人の赤ん坊を抱かせて貰ったとき、私の頬を濡らしていたのは悲しみの涙だった。
母親の温かい乳の味を知る事なく育つ、この子らの将来、そして我が子を胸に抱けなかった、姉の無念……。
やるせなさに胸が一杯のまま、姉の葬儀が終わっていた。
お義兄さんのご両親も駆けつけてきたが、私は赤子達を片時も手離さなかった。
姉の忘れ形見。
姉が安心してこの子達を預けるとすれば、私以外にいないように思えたのだ。
本来ならばお義兄さんという片親がいるにも関わらず、私はその考えに固執した。
子供らの名前は、かねてから姉が望んでいた「咲希」と「多希」に決まった。
姉らしい、可愛い名前だと思う。