夜桜と朧月
空気を読んでのことか、私達の会話が終わると、さっきの女性店員がトレイに幾種類かのリングを乗せて運んで来た。
薫が「どれか好きなのを選んで」と促すが、どれも素敵でなかなかどれとも選べない。
店員もあれこれ商品の説明をするけれど、説明を受ける度に迷ってしまうからキリがない。
結局、自分の指に填めてみて、一番しっくり馴染んだものを薫に見せ、どう?と聞いてみた。
私の誕生石が填まった、シルバーの細いリング。
薫の指に合う同じリングも、丁度在庫があったらしい。
きっとこれなら、薫が指に二つ嵌めていても邪魔にならないだろう。
「……良いんじゃないか?これ、ダイヤモンド?」
「うん」
薫が店員にこれ、と示すと、彼女はその商品の説明を長々と始めた。
「こちらはこのブランドの設立記念品となりまして、ペアリングの他に、オプションで、シルバーネックレスが付きます。こちらのお品で宜しいでしょうか?」
「これでお願いします」
即決した薫に苦笑してしまう。
「オプションのネックレスのデザインですが、時計を模したもので、素材はシルバーですね。お客様のご希望に合わせた『時間』と『分』の針を盤に刻み込むので、記念日など…例えば1月1日なら『1時1分』とか、そういった『特別な時間』を、皆様刻まれております。お客様の時計の針は、何時何分に致しましょうか?」
店員は、スラスラとマニュアル通りに話を進める。
「どうする?」
困ったように私に薫が聞いてきた。
「……咲希と多希の、誕生日」
………そして、姉の命日。
薫が「どれか好きなのを選んで」と促すが、どれも素敵でなかなかどれとも選べない。
店員もあれこれ商品の説明をするけれど、説明を受ける度に迷ってしまうからキリがない。
結局、自分の指に填めてみて、一番しっくり馴染んだものを薫に見せ、どう?と聞いてみた。
私の誕生石が填まった、シルバーの細いリング。
薫の指に合う同じリングも、丁度在庫があったらしい。
きっとこれなら、薫が指に二つ嵌めていても邪魔にならないだろう。
「……良いんじゃないか?これ、ダイヤモンド?」
「うん」
薫が店員にこれ、と示すと、彼女はその商品の説明を長々と始めた。
「こちらはこのブランドの設立記念品となりまして、ペアリングの他に、オプションで、シルバーネックレスが付きます。こちらのお品で宜しいでしょうか?」
「これでお願いします」
即決した薫に苦笑してしまう。
「オプションのネックレスのデザインですが、時計を模したもので、素材はシルバーですね。お客様のご希望に合わせた『時間』と『分』の針を盤に刻み込むので、記念日など…例えば1月1日なら『1時1分』とか、そういった『特別な時間』を、皆様刻まれております。お客様の時計の針は、何時何分に致しましょうか?」
店員は、スラスラとマニュアル通りに話を進める。
「どうする?」
困ったように私に薫が聞いてきた。
「……咲希と多希の、誕生日」
………そして、姉の命日。