夜桜と朧月
そして、今日はその前日。


「さきー、たきー。苺、楽しみだねぇ」


にこにこ笑って双子に話し掛けながら、私は明日のための準備をしている。



日帰りでも乳児の移動には色んな荷物を用意しなければならないから大変だ。



本人達は、床に寝転がってみたり、玩具で遊んでみたり、気楽なものだ。




薫はと言えば、晩酌からそのまま発泡酒を片手に居間に移り、どうやらスマホのネットで遊んでいるらしい。


皆が集まって過ごす至福の時。


だが、本来なら私がいるこの位置は、姉のものだった。




姉に対しての申し訳なさも綯い混ざる。





その後ろめたさや胸にしこる蟠りに少し嫌気を感じていると、私の携帯が鳴った。





夜も遅くに誰だろうと、着信相手を見ると……――――。



―――【楓】と表示されていた。―――


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