夜桜と朧月
言うなれば、小学生の男児が気になる女児のスカートを捲る、そんなアプローチ。


そんな俺の気持ちは、友人たちにはバレていて。


特にアカ―――赤坂は中学時代からの友人だと言うこともあってか、目敏くも逸早く俺の気持ちに気付いていた。


「告んねーの?」


隙あらばそう言ってくるアカに、時々プレッシャーを感じたりした。


「中坊ん時、カノジョとかヨユーだったじゃん。何でお前今ヘタレてんの?」


中学時代にも付き合っていた女だって、一人や二人ぐらいいたけど。


でも、真愛に対する感情と、そいつらに対する感情とでは根本的なところから違うのだ。



どうにかして真愛の瞳に映りたい、真愛の笑顔を独り占めしたい、あの手を握りたい……。



欲だけは際限なく拡がっていく。



「……隣のクラスの高田って奴が、椿に告ったってよ」



アカが言ったその言葉で頭が真っ白になった俺は、とうとう真愛を呼び出し、お互い部活中だというのに、皆が見ている前で「付き合ってくれよ」と頼み込んだ。


それは最早懇願に近かったのだろう。



道場の横に聳え立つ、桜の木の前での事。


「……いいよ」

恥ずかしさのあまりか俯いて返事を返す真愛を、胴着を着たまま抱き締めた。




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