夜桜と朧月
女は初めてと言う訳でも無いのに柄にも無く緊張して、手を繋ぐのに1週間もかかってしまった。


キスをするのに、1ヶ月。



初めて体を合わせたのは、夏休みが終わる頃、その夏の最後の花火大会の帰り道での事だった。


真愛自身の初めてを俺が奪ったのだ。嬉しくない訳がない。




ずっと大切にしようと思った。

決して離すまいと誓った。




そして、別々に歩く道を選んだ高3の冬。


俺は進学。真愛は就職。


それでも、気持ちさえあれば、繋がっていられると楽観視していた俺は、とことん甘ちゃんだ。


将来においてさえ、確りと自分の行き先を見つけることが出来ずただ漠然と進学を選んだ俺とは違い、真愛はちゃんとその先の事を考えていた。



一流企業の営業職に就いた真愛は、朝早くから夜遅くまでノルマと契約書に拘束された。



今までの様に毎日会えるわけではないと、分かってはいたが、あまりにも真愛に自由が無さすぎた。



そして、俺はと言えば、空いた時間にバイト等を入れはしたものの、其なりに気楽な学生生活を送っていて。



擦れ違いが生じた。




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