夜桜と朧月
楓とは、彼と二人で【恋愛】は出来るが、【愛情】までは与えられない。



だが、薫にはただ無償の【愛情】をその心に注いであげたいのだ。


男女の間で成り立つ、恋愛とは、似て非なる感情。其れを人がなんと呼ぶか。


『母性愛』に近いのかも知れない。


実際、私は双子の母でありたいとも望んでいるではないか。



もし、楓が、昔から【其れ】を知っていたなら、今こうして私の横にいたのは間違いなく楓の方だっただろうに。



「着いたぞ」



薫に言われて現実に引き戻された。


「あ…、ごめん」

ふ、と薫が微かに笑う。

「ここで待ってるから」

車は校門の前に停められた。

「……すぐ、終わるから。待ってて」


………そう。もう直ぐに、終わる。




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