夜桜と朧月
「お前はちょっと見ない間にすぐ変わっていくから、覚えておきたいんだよ」
愛しげに髪や頬を伝う指は、あの頃より骨ばっている。
そう。
彼も、時と共に変わっていくのだ。
生きていればこそ肉も心も変わっていく。だから。共に居られない事を知る時、人は切なくなる。身を切られるように。
だが、体が塵芥と果ててしまえば、遺された者は深い喪失を心に負う。
心に、穴が開くのだ。
薫の心に開いた穴は、未だに塞がる事はない。
【其れ】だからこそ。
私は、薫を選ぶ。
薫を取り巻く私達。
その世界が、愛情で構築されていればいい。
そして、楓のこれから先の世界で、彼の為に【其れ】を構築してくれる、誰かに出逢えればばいいと、切に願う。
愛しげに髪や頬を伝う指は、あの頃より骨ばっている。
そう。
彼も、時と共に変わっていくのだ。
生きていればこそ肉も心も変わっていく。だから。共に居られない事を知る時、人は切なくなる。身を切られるように。
だが、体が塵芥と果ててしまえば、遺された者は深い喪失を心に負う。
心に、穴が開くのだ。
薫の心に開いた穴は、未だに塞がる事はない。
【其れ】だからこそ。
私は、薫を選ぶ。
薫を取り巻く私達。
その世界が、愛情で構築されていればいい。
そして、楓のこれから先の世界で、彼の為に【其れ】を構築してくれる、誰かに出逢えればばいいと、切に願う。