おうちにかえろう
漸く意を決して家の門を開けた頃には、8時半を回っていた。
玄関先の電気はついていなかった。
だから、街灯にぼんやりと照らされているインターフォンに指を当てる。
そのまま押すことは出来なくて、また、大きく息を吸って、吐いて。
よし、と、心の中で呟いてから、そっと、ボタンを押した。
ピーンポーン…
家の中から響いてきた音が、私の鼓動を容易に速めていく。
同時に、押してしまった後悔が、どっと押し寄せてきた。
訳の分からない感情だ。
【―――入りなさい】
スピーカーから聞こえたのは、お父さんの声だった。
聞こえた瞬間にまた、ドクンと鼓動が跳ねた。
そのまま、トクトクトクと、早いスピードで私の身体を揺らし続ける。
ガチャ…
久しぶりに開けた玄関のドアはひどく重くて。
家の中は、私の部屋よりも、暗い。