おうちにかえろう
「………そうですか」
自分でも驚くほど冷静に、そう答えていた。
だって正直、今まで籍をいれていなかったことの方が不思議なくらいだ。
ずっとずっと、お父さんと付き合ってきたことを知っていた。
だから、いつかこうなるんだろうな、と思ってはいた。
でも、しなかった。
それには、理由があったから。
「―――送られてきたんだよ」
せっかく落ち着いたはずだったのに、お父さんの一声でまたドクンと鼓動が跳ねた。
お父さんは、相変わらず私に背を向けたままだ。
こちらを向く気すらないらしい。
だけど、そのことが、どこから生まれているのかも分からない焦りを煽った。
「…離婚届。母さんから」
“母さんから”
久しぶりに、本当に久しぶりにお父さんの口から発せられた言葉に、
目の前が、真っ暗になった。