おうちにかえろう






記憶を辿っても、私は今まで一度も、母に求められたことがなかったと思う。



むしろ、いつだって邪魔な存在として扱われていた。





『…お母さん、あやちゃんの家に泊まりに行くのね、来月になったよ』


『は!?何で!?今週末って言ってたじゃない!!』


『…うん、でも…急に用事が出来たから無理だって…』


『…、…あっそ…』




“母”じゃなくて、常に“女”で居たい母にとって、私が邪魔な存在なのは当たり前のことかもしれない。





『…もしもし?ごめん、今週末うち無理になっちゃった。…美月、友達の家行かないんだって。…あたしだって楽しみにしてたけど仕方ないじゃない。またあの子が寝てから来てよ』





日に日に思い知らされた。



そして、日に日に募っていった想い。







『大丈夫よ、別にあの子のことなんて気にしないでも』





―――母は、どうして私のこと産んだんだろう。




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