おうちにかえろう
「美月のこと拾ってくれたんだって!?お兄さんが!!ありがとう!!」
「切れてんのか感謝してんのかどっちなんだよお前は」
「まぁまぁまぁ」
二人が接触するといつもこうだ。
今日も火花がバチバチと散っている。
…散らしているのは、ほぼほぼまーちゃんの方なんだけど。
「つーかお前、飯食ってねーの?」
「え?」
いきなり話題を振られて、普段出さないような高い声を出してしまった。
見れば、雨宮くんの真っ直ぐな瞳に捕まった。
「いや、だって、腹減って倒れてたって聞いたし。何、ダイエットとかしてんの?」
私の隣の席に腰かけた雨宮くんにそう問われ、「うーん…」と天井を仰ぎ見てしまった。
ダイエットなんかしてないけれど。
なんて説明すればいいのか…
「この子今一人暮らししてんのっ。で、この子壊滅的に料理が出来ないのっ…そこまで言えば何となく分かるでしょ?」
「あー…?うーん…?分かるような…分からないような………ものすごくざっくりな感じでいいなら分かった」
…察してくれてありがとう。
無駄にしてしまった食材には本当に、申し訳ないことをしたと思っている。
毎日やれば少しずつ上手くなると思ったんだけどな…上手くなる前に材料が尽きてしまった。
人間、努力だけじゃどうにもならないことなんて、山ほどある。
だけど、それでも努力しなければ。
どうにかして、自炊、しなければ。
「でも、そんなんだったら外で飯食ったりとかすりゃいいじゃん。弁当買ってきたりとか」
当然の疑問をぶつけられて、小さく溜息をついてしまった。
そうだよね、普通だったらそう思うよね。
「お金かかるでしょ毎日じゃ。お金使いたくないのあんまり。だから頑張って自炊してみようと思ったんだよ」
「…、ふーん…?何かよく分かんねーけど…大変だな…」
「心のこもってない労いありがとう」
でもまぁ、これくらい軽く流してくれた方がいい。
全部に何で?と聞かれてしまったら、私はこれ以上答えられない。
…答えたくない。