おうちにかえろう
父がいつ母の浮気に気付いたのかは分からない。
2人の関係がどうなっているかなんて、娘の私ですら分からなかったのに、その日は突然訪れた。
―――母が、突然居なくなったのだ。
気付いたのは、私がまーちゃんの家から帰ってきた時。
母の荷物だけがごっそりとなくなっていた。
携帯に電話してみても、連絡もつかない。
きっかけなんて分からなかったけれど、ああ、多分、男の人のところに行ったんだろうな、と。
ぼんやりと思った。
母が居なくなったことを告げたときの、父の反応は、今でも覚えている。
『―――そうか』
あまりに冷静すぎて、寒気がした。
恐らく、心当たりでもあったんだろうに、当時の私には薄情にしか思えなかった。
どうして、探そうともしないんだろう。
どうして、冷静で居られるんだろう。
父の気持ちが全く理解出来なくて、
元から少なかった父との会話は、どんどん減っていった。
そして、仕舞には、なくなってしまった。