おうちにかえろう
うらめしそうに辺りを見回していたと思ったら、朔兄が突然足を止めた。
それに少し遅れて立ち止まると、朔兄は目を凝らすようにして、眉間に皺を寄せていた。
「…どうしたの?」
そう問うと、一瞬俺を見た後また、視線を逸らしてどこかを見据え始めた。
自然に、俺も同じ方向を向いてしまう。
「…なぁ、あれ…美月ちゃんじゃねぇ?」
「……え?」
朔兄の言葉に、俺も目を凝らした。
視界は雨に遮られていて、決して良好ではないけれど、俺たちの視線の先には確かに、女の子がいた。
この豪雨の中、雨も差さずに歩いている。
…言われてみれば、確かに檜山なような…
「ほら、絶対そうだって」
…うん、そうだ。
檜山だ。
あの感じは絶対そうだ。
「っつーか何してんだよあいつ、傘もささないで…」
そう言って、朔兄とほぼ同時に檜山のもとへ向かおうとした時だった。
どこからわいて出てきたのか、傘を持った3人の男が、檜山に群がったのだ。
もちろん、ここまで会話は聞こえない。
だけど、少しの会話をしたあと、檜山は男に肩を抱かれて、そのまま奴らと一緒に歩き出してしまった。