おうちにかえろう
それにしても、本当に何してんだよこいつは。
もうすぐ夜中の1時だぞ。
こんな真夜中に、ずぶ濡れで駅の近く徘徊してるとか…
「さすがにこの雨で傘ささないのはどーなの」
朔兄の声に、思わず足を止めた。
駅近くの大通りにかかった、歩道橋の下。
雨のせいか、大通りの車通りがいつもよりも激しい。
「……。」
檜山は、何も言わないまま俯いていた。
何を考えているのか、力ない表情からは全く想像出来ないけれど、何かあったことくらい、俺ですら分かった。
確実に、いつもの檜山じゃない。
「さっきの奴らも知り合いでも何でもねーだろ?」
「……。」
「…ついてったら普通にやられてたと思うけど」
朔兄の言葉に、思わず力強く頷いてしまった。
いや、でも冗談抜きにやられてたって。
だって、あいつらが向かおうとしてた先、ラブホ街しかねーもん。
そんなことはさすがに言えなかったけれど、代わりに溜息が毀れた。
雨の音でかき消されて、檜山に聞かれることはなかったけれど。
「…………はい…」
漸く口を開いたと思ったのに、明らかに、心ここにあらずだ。
何に対しての“はい”なのか、全然伝わってこない。
―――やっぱり、めちゃくちゃ変だ。