おうちにかえろう
「…また眉間に皺寄ってる」
「は?」
顔を覗き込まれて、視界が雨宮くんでいっぱいになって、はっとした。
今、一瞬別の世界に飛んでいた。
危ない危ない。
「お前いっつもここに力入れてて疲れない?そんなに俺と話すのが嫌か」
人差し指で眉間に触れた雨宮くんに向かって、軽く首を振った。
「疲れない。別に嫌じゃない」
「的確なお返事ありがとう。別にって言い方がイラっとするけどな」
「どういたしまして」
…怒ってるわけじゃないし、嫌がっているわけでもないんだけどな。
自分でも知らないうちに、指摘されるような顔になってしまっているから、どうしようもない。
いちいち否定するのも面倒だから誤解されたままでも別にいいんだけど。
「あ、ってか次移動じゃない?行かないと!美月、行こう!!」
「…あ、うん」
「雨宮なんか置いてこう」
「なんつー言い方するんだお前は」
まーちゃんに突然腕を掴まれて、用意していた教材を咄嗟に抱えて立ち上がった。
雨宮くんの視線には気付いていたけれど、振り返ったらまたまーちゃんと雨宮くんのバトルが勃発すると思って、気付かないふりをした。
まーちゃんは、わざとこうしてくれたんだと思う。
これ以上突っ込まれたら困るから、それを察してくれたんだと思う。