おうちにかえろう
ただ、こんなに感情的になっている檜山を見るのは初めてだったから、面喰ってしまって、何も言えなくなってしまった。
「あたしがいつ一人暮らししたいなんて言ったんだよ…っ自分らが都合悪いから追い出したんだろ…!」
「…美月ちゃん」
「ずっとそうだもんっ…ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと!!!」
「ちょっと待って」
「あたしが何したの…っ」
「美月ちゃん」
「ふざけんな…っ…どいつもこいつも勝手なことばっかりっ…」
「落ち着けって…!」
朔兄の声が、漸く届いた。
取り乱していた檜山が、朔兄に肩を掴まれたことではっと顔を上げた。
そして、大きな瞳でゆっくりと、朔兄と俺を見据えた。
…ああ、何だ。
泣いてなかったのか。
そのことにひどくほっとしたはずなのに、喉の奥がぎゅっとなって、息苦しい。
「……檜山」
俺は、正直どうしていいのか分からなくて、こんな風に名前を呼ぶことしか出来なかった。
なんて声をかけていいのか分からない。
だけど、こんなんじゃ益々放ってなんておけない。
こんな取り乱した檜山を野放しにしたら、本気で何をするか分からない。
だって、こいつは多分、自分を大切にしない奴だから。
今、絶対、逃がしちゃ駄目だ。