おうちにかえろう
あの日とおんなじ
「やべー、パンツまでいってる…」
「美月ちゃん大丈夫?」
「…主にパンツがぐっしょりです」
バスタオルを差し出してくれた雨宮さんにそう答えると、「勘違いされるからその発言はやめなさい」と怒られてしまった。
いや、だってあなたが…
あなたが、俵担ぎで私のことを運ぶから…
お尻にガンガン雨風をくらったんですよ…
…とも言い出せず、「すみません」と素直にタオルを受け取るしかなかった。
「望、風呂沸かせ風呂!」
「ん、今日誰も湯船浸かってないから今からお湯はる。ちょっと待ってて」
…雨宮くんは、頭を雑に拭きながら、廊下に消えていった。
昼間の雰囲気とは違う、薄暗くて静かなリビングを、初めて来たわけでもないのに見渡した。
もう二度と来ることはないと思っていた、雨宮家。
逃げられなかったからとはいえ、またお邪魔することになるなんて…
「………。」
…もう二度と会うこともないと思っていた。
「大丈夫?」
雨宮さん、全然普通だ。
私、…怒らせたと思っていたのに。