おうちにかえろう
「……。よお、起きたか。もう8時回るぞ」
「……………なんなのこの状況………」
「いや、俺が起きた時にはすでにこうなってたから」
「………そう………おはよう……」
「おう、おはよう。そろそろ飯にすんぞ」
仰向けに寝転がったまま、起き上がることも出来ないまま、エプロン姿の雨宮くんを見上げた。
だって…両サイドで寝ている人たちに、がっちり抱きつかれてるんだもん、起き上がれるわけがない。
謎の状況の中でも、雨宮くんはかなり冷静だった。
お玉を持って、かなりしれっとした目で、私たちを見下ろしている。
「………あの…助けてもらえませんか……」
「起き上がればいいだろ」
「……すごい力で締め付けられてるから無理………」
まだ頭もすっきりしていないのに、この状況を理解するなんて無理な話だった。
だって、何で梅田さんと入間さんが、私の横に寝ていて、
しかも、私に抱きついてるんですか。
ここまでに至った経緯を聞いたって理解出来なさそうなんですが。
「……おい馬鹿2人、起きろ、何やってんだ」
ぺしっ、ぺしっ、と、2回続けていい音が響いた。
同時に、私の身体を締め付けていた力から解放される。
「…っ…いてぇ~~……」
痛そうにおでこを押さえる入間さんと、
「……なにごとです……?」
まだ寝ぼけている様子の梅田さん。
2人が目を凝らして私を見てくるものだから、どうしていいのか分からず、ただ天井を見上げたまま口元を引き攣らせてしまった。