おうちにかえろう




「―――そうなんです、あらためまして…」



それぞれが自分の席につき、美味しそうな朝ご飯を目の前にしたところで、雨宮くんが切り出してくれた。



『あ、そういえばこいつ、今日からうちに住むことになったらしいから』



その一言で完全に目が覚めた。


みんなの視線が一気に突き刺さったから、余計にかもしれない。




『え!!まじで!?おめでとう!!!いらっしゃい!!!ようこそ!!!』


『おめでとうの意味が分からんよ、みなちゃん…』




だから、こんな朝っぱらからで申し訳ないけれど、ご挨拶。




「檜山美月です、17歳です、えー…っと、わけあって、こちらでお世話になることに………なったの?」


「いや俺に聞かれても」



雨宮くんに無表情でそう返されて、少々困惑した。


お世話になることになったってことで…いいのかな…?


昨日の流れ的に…そういう方向になった、ってことで、甘えてしまってもいいのかな…






「…。えー……。…多分、お世話になることになりました」


「多分!?多分なの!?」


「皆様の邪魔にならないよう、そーっと生活して参りたいと思っていますので、何卒よろしくお願い致します…」


「いえいえこちらこそ…」




“多分”という単語が引っかかるらしい入間さんは、「え、結局どっちなの!?」と立ち上がって前のめりになっていたけれど、梅田さんは全てを察したかのように、深々と頭を下げてくれた。




「挨拶済んだら飯食ってくれよ、いつまで経っても片付かねぇから」



不満げにそう洩らしたのはもちろん雨宮くんで、その言葉に、みんなが揃って「あ」と短い声を洩らしていた。


そうそう、朝ご飯。


せっかく作ってくれた、美味しそうな朝ご飯。





「パンにスクランブルエッグにウインナーにスープにサラダに…おお、ヨーグルトまでついてる、…超豪華。すごいな」



つい、前のめりになってしまった。


何か、パンがバケットみたいのに入ってる。


何か、ジャムが並んでる。


何か、お洒落。


ドラマとかで出てきそうな朝ご飯だ。





「のんちゃんが作る朝ご飯はバランスいいんだよ…おいしいし…」


「そうそう!望起きるのうちのじーちゃん並みに早いから手のこんだもん作ってくれんだよね!…いっただっきまーす!」



梅田さんはスープを、入間さんはパンを手にとって、それぞれが口に運んだ。



「うまい…」
「うまい!」



ほぼ同時にそう漏らした2人は、黙々と食べ続け始めた。


私も、そんな2人に遅れを取りながらも、スクランブルエッグを一口。




「……おお、何か美味い。バターの味がする」


「当たり前だろ、ナメんなよ」


「なぜ喧嘩越し」


「うるせーよとっとと食え」




だから、なぜ喧嘩越しなんですか、雨宮氏。





< 136 / 199 >

この作品をシェア

pagetop