おうちにかえろう
「―――そうなんです、あらためまして…」
それぞれが自分の席につき、美味しそうな朝ご飯を目の前にしたところで、雨宮くんが切り出してくれた。
『あ、そういえばこいつ、今日からうちに住むことになったらしいから』
その一言で完全に目が覚めた。
みんなの視線が一気に突き刺さったから、余計にかもしれない。
『え!!まじで!?おめでとう!!!いらっしゃい!!!ようこそ!!!』
『おめでとうの意味が分からんよ、みなちゃん…』
だから、こんな朝っぱらからで申し訳ないけれど、ご挨拶。
「檜山美月です、17歳です、えー…っと、わけあって、こちらでお世話になることに………なったの?」
「いや俺に聞かれても」
雨宮くんに無表情でそう返されて、少々困惑した。
お世話になることになったってことで…いいのかな…?
昨日の流れ的に…そういう方向になった、ってことで、甘えてしまってもいいのかな…
「…。えー……。…多分、お世話になることになりました」
「多分!?多分なの!?」
「皆様の邪魔にならないよう、そーっと生活して参りたいと思っていますので、何卒よろしくお願い致します…」
「いえいえこちらこそ…」
“多分”という単語が引っかかるらしい入間さんは、「え、結局どっちなの!?」と立ち上がって前のめりになっていたけれど、梅田さんは全てを察したかのように、深々と頭を下げてくれた。
「挨拶済んだら飯食ってくれよ、いつまで経っても片付かねぇから」
不満げにそう洩らしたのはもちろん雨宮くんで、その言葉に、みんなが揃って「あ」と短い声を洩らしていた。
そうそう、朝ご飯。
せっかく作ってくれた、美味しそうな朝ご飯。
「パンにスクランブルエッグにウインナーにスープにサラダに…おお、ヨーグルトまでついてる、…超豪華。すごいな」
つい、前のめりになってしまった。
何か、パンがバケットみたいのに入ってる。
何か、ジャムが並んでる。
何か、お洒落。
ドラマとかで出てきそうな朝ご飯だ。
「のんちゃんが作る朝ご飯はバランスいいんだよ…おいしいし…」
「そうそう!望起きるのうちのじーちゃん並みに早いから手のこんだもん作ってくれんだよね!…いっただっきまーす!」
梅田さんはスープを、入間さんはパンを手にとって、それぞれが口に運んだ。
「うまい…」
「うまい!」
ほぼ同時にそう漏らした2人は、黙々と食べ続け始めた。
私も、そんな2人に遅れを取りながらも、スクランブルエッグを一口。
「……おお、何か美味い。バターの味がする」
「当たり前だろ、ナメんなよ」
「なぜ喧嘩越し」
「うるせーよとっとと食え」
だから、なぜ喧嘩越しなんですか、雨宮氏。