おうちにかえろう
拍子抜けした顔で見上げられてしまって、はっとした。
それと同時に、肩に置いていた手を引っ込めた。
…何言ってんの、私。
意味が分からない。
「……泣いてないって何?」
「……いや……正直私も分からないというかなんというか」
そう答えると、雨宮さんはまた同じような顔をして、今度は笑いだした。
「何だそれ」
ほんと、何だそれ、だ。
訳が分からな過ぎて、私だって笑えてくる。
「っつーかどうした?何でここにいんの?」
「…あ、いや…部屋を片付けてくれていると聞いて、申し訳ないなと思い手伝いに参りました」
そう言って、びしっと姿勢を正した。
雨宮さんは、目をきょとんとさせたあとにゆっくりと立ち上がって、今度は私を見下ろした。
至近距離で見つめられて、思わず仰け反りそうになる。
「美月ちゃんはほんと、見かけによらないねぇ」
「……は?み、見かけ?」
「ん、こっちの話」
にこっと意味深に笑われても、私は笑えなかった。
見かけによらないって、どういうことですか?
もしかして私、馬鹿にされてます?
「いいよ手伝わなくて、全部重いし」
ちらっと彼の視線が流れた方に目をやると、段ボールの山がずっしりだった。
この部屋…物置にでも使われていたのだろうか。
「出てる荷物とりあえず押入れん中いれようと思ったけど、押入れん中も何か訳分からんことになってて、整理してたら時間くった」
そう言われて押入れを見ると、片側半分が空いていた。
「?半分空いてますよ?」
「そこは美月ちゃんの布団とか色々いれるでしょ。っつーか半分しか空かなくてごめんね」
その言葉に、納得してしまってから、罪悪感に襲われた。
そんな…私の荷物なんて、たかが知れてるから、いいのに…
自分が女なのか疑いたくなるほど荷物少ないし…
でも、一生懸命掃除をしてくれた人に対してそんなげんなりとするようなことを言ってはいけないと思い、ぐっと言葉を飲み込んだ。
「とんでもないです、ご迷惑おかけしてすみません」