おうちにかえろう
「いやいや、迷惑だと思ってたらうちに住めとか言わないから」
雨宮さんがにっと笑った顔は、何だかいたずらっ子みたいで、子供みたい。
でも、何でかはよく分からないけれど、その笑顔を見ると胸の奥がすーっと晴れる感覚になる。
「…そう言っていただけるとありがたいです」
その代わり、何でか目を合わせられなくなるんだけど。
「今日、バイト前に荷物持ってこれるだけ持ってきたいと思ってます」
「あ、今日もバイトなの?にゃんにゃん?」
「はい、にゃんにゃん言ってきます」
「そっかそっか、働くねぇ」
「恐れ入ります」
「荷物運ぶの手伝おうか?俺今日休みだし。望とかも暇だと思うし。車で運べるのあれば運ぶけど」
「…………。いいのですか」
「あんまでっかいのは業者に頼んでもらわないと車乗んないけどな」
「いや、…家具とかは全部こちらでどうにかしますので…」
そう言って、一気に気が重くなった。
早めにお父さんに連絡して、マンションを解約してもらわないといけない。
私だけが行っても無理だろうし、お父さんと一緒に行くことは絶対にないし。
だから、どうしたって全部、頼むしかない。
(…今回は仕方ない。どうにもならない。…迷惑かけるしかない)
家具とかもどうするか、全部相談しないと。
…相談、出来るかどうかも分からないけど。