おうちにかえろう
「…どうした?」
「っ」
突然目の前に顔が来たものだから、身体を引いてしまった。
いや、だって、あんまり至近距離で覗かれたものだから、驚いてしまった。
「…その反応、ちょっと傷つくんですけど」
仏頂面でそんなこと言われても、まだまだ全然近い距離だから、上手なリアクションを返せない。
「…す、すみません」
「謝られると余計傷つくわ」
「すみません」
「いや、だからね」
なぜかじりじりと詰め寄られて、どんどん後ずさってしまう。
雨宮さん。気のせいじゃなければ、若干面白がってません?
私の反応見て、楽しんでません?
笑ってはいないけれど、心の中で、笑ってません?
そんな、じーっと見つめられても、毛穴くらいしか見えないと思いますけど…
「美月ちゃんは何か…男に免疫あんのかないのか分かんないね」
「…、は…、…わ」
ガツン、と踵が何かにぶつかった。
と思ったら、次は流れるようにガタガタガタ…と豪快な音がした。
「…………。ん?」
振り向くのが怖いんですけど。
私、今、絶対…何か倒しましたよね?