おうちにかえろう
まだあどけなさが残っている寝顔。
さし込む光に照らされて透けて見えて、何だか凄く綺麗で、儚い。
儚くて…
ううん、でも、それよりも―――…
「……っ」
―――気付けば、手元に写真はなくなっていた。
「…あー、これ、こんなとこにあったんだ」
その声を頼りに振り返ると、さっきまで私が持っていたはずのアルバムは、雨宮さんの手元にあった。
それに気付いたころにはもう、雨宮さんは私に背を向けてしゃがみ込んでいた。
「さーて、全部片付けますかね!美月ちゃんも手伝ってくれる?」
まるで、何事もなかったかのようにそんなこと言われても、すぐに返事は出来なかった。
…やばい。
私、何勝手に人様の家の写真なんて見てるんだろう。
もしかして、怒ったんだろうか。
ごめんなさい。
でも、あんまり素敵な写真だったから、吸い込まれてしまって。
惹きつけられてしまって、欲が出た。
もっと見たいって無意識に思ってしまって、許可もなく見進めてしまった。
「…ごめんなさい」
「…ん?何が?」
ほら、やっぱり、何事もなかったかのような声。
「勝手に見てしまって…」
「え?あー、これ?全然いいよ!そういえばさ、怪我なかった?さっきこれ倒したとき」
「…全然、大丈夫です…」
「そっか!よかった!」
雨宮さんによって、散らばった荷物がどんどん段ボールの中に詰められていく。
私は、手伝ってほしいと言われたのに、その様子をただ、ぼんやりと見つめていた。
この気持ちを、なんと表現したらいいだろう。
懺悔?後悔?…ううん、それよりももっと、ぐしゃぐしゃとしたもの。
「……あんまりにも、綺麗だったから……」
だから、まだこんな、言い訳みたいな言葉を洩らして。
「…だからほんとにいいって」
笑い交じりな返答を聞いてまた、同じ気持ちに呑まれる。