おうちにかえろう
私の目は、7番目の項目に釘付けだった。
人生を大いに楽しむって…
ここに住むことと関係ないような…
「…それ、親父とお袋が決めたんだよ」
その声に、漸く顔を上げた。
雨宮さんは、いつも以上に優しい顔で、その紙を見つめていた。
「せっかくここに住むんだったら、腹抱えて笑えるような毎日を送ってほしいって」
―――それを聞いて、真っ先に思い浮かんだのは、雨宮さんの言葉だった。
昨日、言ってくれた言葉。
“毎日腹が筋肉痛になるまで笑わせてやるから”
だから、ここに住めって、誘ってくれた。
上手に表現出来なかったけれど、
戸惑ったけれど、
放っておいてほしいって何度も思ったけれど、
ここに居るってことは、結局私…
嬉しかったんだ。
私みたいな小娘に、寄りそってくれたこと。
嬉しかったんだ。
だから、おこがましいけれど、
“ここが私の居場所になったら”と、想像してしまったんだ。
「まぁ正直、4番以降に関してはどうにもならんときもあったけどな、特に7番」
笑わせてやる、と言ってくれたのは、
雨宮さんのお父さんとお母さんが、そうだったからなのかな。
その意思を受け継いで、下宿を営んでいるのかな。
…雨宮さんは。
今も、ここで。
「綺麗事じゃねーかと思うけど俺は好きなんだよね、それ。だから今も残してんの」
にっと笑った顔が、全部を表している気がした。
雨宮さん…何だか嬉しそう。