おうちにかえろう





―――ヴー…ヴー…



「!!!!」




謎の世界に誘われそうになっていた瞬間に、誰かの携帯電話がなった。



見れば、テーブルの上に置かれた携帯電話が、唸りながら震えている。



…わ、私のだ…



まさか……







「…これ檜山のじゃね?」


「…あ、……うん」





雨宮くんに手渡されたそれを、すぐには直視出来なかった。



もしかしたら、あの女の人がかけ直してきたのかもしれないと思ってしまったからだ。



そうしたら中々視線が落とせなくて、数秒固まってしまった。






「…おい、切れるぞ電話、賀上からの出なくていいの?」


「……うん、いい……………え?」


「だから、まーちゃんて出てるけど、出なくていいの?まーちゃんて賀上だろ?」





雨宮くんの人差し指は、私の携帯を指差していて。


それに誘われるように漸く視線を落としてみれば、ディスプレイには間違いなく、“まーちゃん”の文字があった。




「………………、…………は!!!!」




し、しまった…


うっかりしていた…


と、いうか、昨日からの怒涛の展開にのまれてすっかり忘れていた…!



今日、まーちゃんがバイトの前に、料理を教えに来てくれる約束だったんだ…!







「賀上って子は美月ちゃんの友達?」


「……。」





ウインナーを頬張った雨宮さんは、可愛らしく首を傾げていた。



…そうだ、言わなきゃ。



まーちゃんには、報告しなきゃ。



だって、まーちゃんは…







「…友達兼、保護者的な感じです」



「……は?」





私の保護者と言っても、過言ではないんだから。








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