おうちにかえろう
「じゃあ気を取り直してお邪魔しますよ~!」
勝手に気を取り直されて、勝手に家に上がられた。
まぁ、俺の家でもあるけれど、今はもう檜山の家でもあるわけだから、文句は言えない。
檜山と賀上は、仲が良いんだもんな。
2人のことは全然分からんけど、それだけはよく知ってる。
本当に、ずーっと一緒にいる印象しかない。
「美月の部屋はどこ!?あ、こっちはリビングかな!?おうちの人は他にいないの!?わー、長い廊下!突き当たりはおトイレ!?」
「一個ずつ質問しろよ忙しない奴だな」
「あんたに聞いてないから!!」
…さっそく大きな声を出した賀上をじとっと睨んでやると、口元を引き攣らせながらゆっくり視線を逸らされた。
分かってんじゃねーか。
次でかい声出したら、首根っこ掴んで追い出してやる。
ここは檜山の家でもあるが、俺の家でもあるのだ。
そこを忘れてほしくない。
「…私の部屋は二階に用意してもらったの」
「そうなんだ!」
「リビングはそこ」
「そっか!当たった!」
「今は誰もいないみたい」
「そっか~残念!挨拶しようと思ったのに…」
「突き当たりはお風呂で、トイレは突き当たりを左に行ったところ」
「なるほどなるほど!」
賀上の怒涛の質問攻めに対して、一つ一つ丁寧に返していく檜山を見て、目を丸くしてしまった。
…さすがいつも一緒にいるだけのことはある。
賀上の扱いに慣れている…
妙なところで檜山を尊敬してしまった。
「まーちゃん、私の部屋に行こう。まだ荷物ごちゃごちゃだけどごめんね」
「全然いーし!私が勝手に来ただけだから!」
「……(ほんとだよ)」
心の声は漏れることなく済んでよかった。
危うく面倒なことになる所だった。