おうちにかえろう
「ぎゃっっ」
後ろから頭をがっちり掴まれて、不気味な声を洩らしてしまった。
何とか振り向いた先には、エプロン姿で眉間に皺を寄せる雨宮さんがいて。
「玄関開けたらただいまだってあれほど言っただろ?え?」
「ごごごごごごめんなさい」
「昨日の練習の成果はどこいったんだ」
「も、もう一度チャンスを…」
「よし、一回だけな」
雨宮さんの黒いオーラに負けて、そんなことを言ってしまった。
やっぱりバレていた。
ただいま、って言わなかったこと。
だけど、今までずっと、言っても返事がなかったんだもの。
だから、私の中では寂しい言葉だった。
出来れば言いたくない言葉だった。
返事が返ってこない度に、
誰も私のことなんて待ってないんだよって、
言われている気がして。