おうちにかえろう
「よし、そしたら…当番は4つしかねーからどっか2人がかりでやるって感じでいいか。お前、何やりたい?」
雨宮くんの声に、はっと我に返った。
そんな私を見て、彼は眉間に皺を寄せていたけれど、それには気付かないふりをして、もう一度表を見る。
(…何やりたいって…)
炊事、洗濯、掃除、ゴミ捨て、だったら…
この中で、役に立てるのっていったら…
「………………炊事?」
「馬鹿じゃねーのかお前」
若干被せ気味にキレられてしまった。
雨宮くんの顔が、今まで見たことないくらい恐い。
「自分で飯も作れないでぶっ倒れたんだろーが」
「…あ」
「今思い出したって顔してんじゃねーよ」
ちっ、と舌打ちまでされてしまった。
相当怒っているらしいことが分かる。
いや、だって、この中で一番大変なのって、炊事なのかなと思ったから…サポート出来るんなら、それがいいかなって思っただけで…
「お前も台所に立つの禁止」
「……お前、も?」
も、というのは…
「……私も禁止令出てるんだ……」
「……」
若干照れくさそうに手を上げてそう言った梅田さんを、何とも言えない気持ちで見つめてしまった。
ああ、…だから…
だから、炊事の欄に×がついていらっしゃる…
「女2人しかいねーのに何で2人とも料理出来ねーんだよ」
「いや、ほんとそれは…謝ることしか出来ません」
「…うん、ぎょめんね、のんちゃん…」
「雛、お前ちょっと黙ってろ」
今日の雨宮くんは、何だか当たりが強い気がする。
だけど、それを突っ込む権利もないと思ったので何も言わずに言葉を飲み込んだ。
「…まぁ、無難に掃除あたり手伝ってもらえると助かるかもなー。結構やるとこ多いし」
口元をひくつかせて怒りを押し殺している雨宮くんから紙を奪い取って、仕切り直してくれたのは雨宮さんだった。