おうちにかえろう
「……ど、どうしたんですかいきなりそんな…」
「いや、いきなりじゃねーよ、ずっと思ってた」
雨宮さん、そんな、きょとんとして目をしてそんなこと言わないでください。
実は気付いていましたから。
“雨宮家の決まりごと”6つ目の項目でしたよね。
分かってる、分かってるんです。
だけど…こればっかりはどうも…
「ああ、それ俺も思ってた!何か寂しいなって!!」
「名字って何か…他人行儀で切ないよね…」
(入間さんと梅田さんまで…)
…どうしよう。
この場に私の見方がいない。
…。
…あれ?
いや、ちょっと待った。
一人いるじゃない、味方が。
「…ちょ、ちょっと待ってください、そしたら彼だって」
「…なんだよ」
雨宮くんに怪訝そうに睨まれても、怯むわけにはいかなかった。
私は今から、事実を突き付けるのだ。
「私のこと、未だに檜山呼びですから」
ふん、と得意気に言ってやった。
雨宮くんは、何言ってんだこいつ、と言わんばかりの眉間に皺を寄せていた。
きっと、彼は今、こう思っていることだろう。
“ちっ…気付かれてたか…!”…と。
…分かるよ、気持ちは。
だって、クラスメイトで、今までだってずっと名字呼びだったのに、突然下の名前なんて気恥かしいったらないですよね。
正直な話し、無理ですよね。
出来ればこのまま何事もなかったかのように、今まで通り名字で呼んでいきたいっていうのが……
「―――美月」
「…………。」
………………ん?