おうちにかえろう
どうしようもない奴
「……ふざけんなよ……」
「ごめんなさい本当にすみませんわざとじゃありません…」
冷や汗なんか流されたって許してやらん。
こいつは今、とんでもない過ちを犯したんだから。
「…何でトイレのマジックリンにバスマジックリンの詰め替え用入れちゃうんだよ」
「……いや、…だって、…マジックリンって書いてあったからこれかなと思って…」
「バスって書いてあるだろ。お風呂のって書いてあるだろ」
「………、ほんとだ……」
「……今気付いたのかよ……まじか……」
は~~~~、と、長めな溜息が廊下に響いた。
おかしいと思ったんだ。
美月に「トイレのマジックリンないから詰め替えといて」って頼んだのに、ゴミ箱に投げ込まれていたのは空になったバスマジックリンの詰め替え用だったから。
いや、さすがにそのうっかりはないわ、と事実を受け入れないようにしていたのに、こいつときたらあっさり認めやがった。
『……またですよねまたやらかしたんですよね。……ほんとにすみません』
素直さを、ここで発揮されても正直困る。
「で、でも、容器はよく洗ったヨ」
「お前やっぱり反省してねーだろ」
CMみたいに翳されてもリアクションが取り辛い。
とりあえず、こいつに掃除は向いてないっていうのは、ここ数日でしっかりと理解出来た。
…あ、掃除“も”だった。
「勿体ねーからそれはそのまま脱衣所の水道の下んとこいれとけ」
「い、いえっさ」
「で、トイレのは空の容器あったろ、白っぽいやつ。あれに詰め替えとけ」
「了解しました」
びしっと敬礼のポーズでいい返事をした美月は、そのまま脱衣所に向かって走っていった。
俺は、その後姿を見て、
「は――…」
また盛大な溜息をついてしまった。