おうちにかえろう
脱衣所の方から変な声がしたものだから、動作を止めてしまった。
今の声は、間違いなく美月だ。
急いで脱衣所に向かうと、中にはなぜか、
「……やっちまいました」
ずぶ濡れの美月がいた。
「………。」
なんだろう、一気に襲ってきたこの脱力感。
見た瞬間に口角が、自然と引き攣った感覚がした。
「…ちょっと目を離した隙になぜそうなった」
「…いや、違うんですこれにはちょっと…深い訳がありまして」
嘘ついてんじゃねーよ。
「よし、試しに話してみろ」
「はい、えーと…、トイレのやつを容器に入れようと思ったんだけど、こぼしちゃいまして、足にかかっちゃいまして」
「それで」
「お風呂場で洗い流そうとしましたら」
「うん」
「シャワーになってることに気付かないまま蛇口ひねっちゃいまして、そのまま頭からかぶりました、ほんとすいません」
そう言った美月の濡れた髪からポタポタと、雫が毀れおちていく。
理由を聞いたら益々脱力感に襲われて、大袈裟に溜息をついてしまった。
「……お前ってほんと……底なしにどんくさいのな」
「…う…言い返せないもどかしさ…」
そんなもどかしさ知らん、と言ったらまた謝られてしまったけれど、とりあえず拭かなければ。
この時期だから風邪をひくことはないと思うけれど、自然乾燥させろ、なんて言えるわけもない。