おうちにかえろう
「望がそう言うならそうなのか。よし、じゃあ湊くんに任せよう」
一緒に住み始めて分かったこと。
こいつは意外と空気が読める。
必要以上に追及したりしない。
引き際がかなりあっさりしている。
薄情と言ってしまえばそれまでなんだろうけど、こいつの場合、それとはまた違う気がする。
「冷たい奴だな、話し聞いてあげようかな、大丈夫かな、とかねーのかよ」
「いや、あたしが聞いても雛ちゃん言わなそうだから。逆に気遣わせても悪いし」
…ほら、やっぱりよく分かってる。
言い方はさっぱりしてるけれど、心配していることだけは伝わってくる。
少し意地悪な言い方をしたことを心の中で反省してから、「よし」と仕切り直した。
「便所掃除、あとちょっとだから片づけるぞ」
「あいあいさーい」
「ふざけてんのか。ぶっ飛ばすぞ」
「超本気ですけど」
分からないことはたくさんある。
だけど、とりあえず分かることは、
ここに住む人たちは昔から、色んな事情を抱えた人たちばかりだということ。