おうちにかえろう




―――駄目だ。


調子が、狂う。


自分のペースが、一気に分からなくなった。





「…、おい、どうした?」



顔を覗き込まれていたことには気付いていたけれど、俯いた顔を上げられない。


だけど、否定しないと。


泣きそうなんかじゃない。


泣きそうなんかじゃない。


だけど、今だってそう。


喉の奥がぎゅーっと詰まって、苦しい。






「…、それ、ものすごい勘違いです」


「…は?」


「泣きそうになったりしてませんから」




やっと絞り出した声は、ひどく震えていたような気がした。


小さすぎる気もした。


だけど、黒髪様には伝わったんだろう。





「ふーん…まぁ、そういうことにしといてやってもいいけど」



そう言ってすっと、私から離れてくれた。






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