おうちにかえろう
完全に邪魔者だと理解した。
私は結局、どこに行っても“こう”なのだ。
見ず知らずの人にこんなにも迷惑をかけて、睡眠の妨害までするなんて、自分で自分が嫌になる。
いつもこう。
いつもうまくいかない。
「すみません早々に立ち去ります…お疲れのところ本当にすみません」
「ああ、いいって急がなくて」
申し訳なさそうに言われてしまったけれど、そんなわけにいかない。
これ以上甘えるわけにはいかない。
残りを一気にかき込んで、麦茶も全部飲みほした。
「本当にごちそうさまでした、死ぬほど美味しかったです」
パチンと手を合わせてそう言ってから、キッチン越しに黒髪さんに食器を渡した。
「おいくら万円ですか」
「100万円」
「千円でいいですか」
「てめぇ」
いくらか聞く前に、お財布から千円札を抜いて、テーブルの上に置いた。
そして、振り返ってもう一度お辞儀をしようとしたら、突っ返されてしまった。
「いらねーよ金なんて」
「いやいや、そんなわけには…」
「じゃあ分かった。金はいいから身体で払って」
「…。」
「冗談に決まってんだろ脱ぐな馬鹿」
真顔で突っ込まれたので、ボタンを外そうとした手を引っ込めた。
馬鹿って言われた。
初対面の人に。