おうちにかえろう
とか何とか考え事をしていたら、あっという間に雨宮さんの家の前まで来てしまった。
昨日の朝は、バタバタと帰ってしまったから外観をよく見れなかったけれど、やっぱり大きい。
とても趣のある、2階建ての木造住宅だ。
道沿いにある小窓は少し開いていて、そこから微かに声が聞こえる。
「雛ちゃんは何もしなくていいから!!そこで見ててくれるだけでいいから!!」
「ほんとだよ、何もすんなよ、動くなよ」
「だって私、今週炊事当番なのに…」
「お前が炊事当番になることは永久にねぇ。炊事の欄全部バツつけといただろーが。何でご丁寧に全部消してあるんだよ。バカ雛」
「…いや、だって何か腹立つなって思って…自分たち料理出来ますみたいな上から目線が鼻につくというか…2人とも何様のつもり…?」
「よーし分かった二度と食うなよ俺らが作った飯」
耳を澄ますとよく聞こえてくる、賑やかな声。
というか、モメてるな、なんか。
恐らく、昨日の朝に会った2人と、雨宮くんの声だと思うけど…
「……。」
どうしよう。
益々入りにくくなってしまった。
お土産を持つ手に、妙に力が入ってしまう。
私、これ…本当に来てしまってよかったんだろうか。