おうちにかえろう
とりあえず、玄関の前に仁王立ちしてみた。
ライトの下にあるインターホンを、睨みつけてみる。
「押」って書いてあるのに…なんて押しづらいボタンなんだ。
これを押してしまったら、私は一体、どんな世界にいざなわれてしまうのだろう。
未知すぎて、想像も出来ない。
「……ごめんください…」
とりあえず、小声で言ってみたのはいいものの、もちろん聞こえるはずもない。
ただ、小窓から漏れるいざこざの声は止まることをしらない。
…どうしよう。
入る前から、なじめる気がしない。
今回も、完全にアウェイだ。すでに察した。
いや、そんなの分かってはいたけれど…
「……。」
帰ってしまおうかな。
何かもう、色々考えるの面倒になってきたし、…逃げちゃおうかな。
雨宮さん、多分すごくいい人そうだし、学校にバラすなんてこと、しなさそうだし…
…よし。
せっかくお誘いいただいたのに申し訳ないけれど、やっぱりご遠慮しよう。
この埋め合わせは、また次の機会ということで…
ガラッ…
「何帰ろうとしてんのかな?美月ちゃん」
「………。」
そろりと振り返ってみれば、そこには、不敵な笑みを浮かべる彼。
「何玄関の前でうろうろしてんだよ」
エプロン姿の、雨宮さん。