おうちにかえろう
目の前の鍋の具が、忙しなく無くなっていく。
その様子を、呆気に取られたまま見つめることしか出来ない。
「……。」
どうしよう。
鍋なんて久しぶりすぎてどうしていいのか分からない。
と、いうか、こんな人数でご飯食べるのが久しぶりだから…
どうしていいのかが、分からない。
「…ぼーっとしてると全部なくなるよ」
「、」
はっとして視線を向けると、雨宮さんが私の分のお鍋の具を、器によそってくれていた。
おいしそうな、トマト鍋。
「飯の時間はここ、戦場になるから」
「あー…」
確かに、と妙に納得。
だって、一刻を争う感じが物凄いもの。
「こいつらに遠慮してないでどんどん食えよ」
にっと意地悪な笑みを見せられて、大袈裟に瞬きを繰り返してしまった。
そして、よそってもらった鍋を、じっと見てみる。
「……いただきます」
手を軽く合わせて、そっと口に運んだ。
初めて食べる、トマト鍋。
酸味のきいた、少し辛めの味が、じんわりと口いっぱいに広がっていった。
「…おいしい…」