おうちにかえろう
頬を赤くしてすやすやと寝息を立てる檜山は、普段のイメージと全然違う。
だからなのか、直視が出来ない。
そっと目を逸らすと、さっきまで傍観者に徹底していたはずの雛が檜山に歩み寄っていた。
腰を下ろし、檜山の寝顔をまじまじと見つめている。
「…超かわいい…食べちゃいたい…」
「雛ちゃんが言うとまじっぽいからやめて…」
湊の言う通り、フードを被った黒いオーラの女がそんなこと言うと、無駄に恐ろしい。
食われる前に起きろ檜山。
雛はやると言ったらやる女だ。
「…朔ちゃん、どうすんの?このまま朝まで寝かせるの?」
湊がそう聞くと、朔兄は少し困ったように首の後ろに手を当てた。
「そーだなぁ…無理矢理起こすのもアレだし…」
…と、いうか、無理矢理起こしても起きないと思うよ。
どこからどう見ても爆睡だからね。
「…いいんじゃね?一人暮らししてるみたいだし。時間気にする理由もねーだろ」
そう言ってから、やっと椅子に腰を下ろした。
…疲れた。
普通に運動するよりよっぽど疲れた。
「…うん、まぁ…そうっちゃそうだけどな」
檜山を見ながら、微笑んだ朔兄。
その笑顔はなぜか、とても優しいものだったから、大袈裟に瞬きしてしまった。