おうちにかえろう
そう言った私を見て、雨宮さんは満足げに笑った。
負けた。完敗だ。清々しいくらいに。
「適当に座って待ってて」
パタン、と音を立てて閉められたドアを数秒見つめてから、ゆっくりと立ち上がった。
…やっぱり、頭が痛い。
これが噂の二日酔いか。
恐すぎる。
社会人になったらコレと毎週闘わなければならないイメージがあるけれど、こんなことで私は本当に社会人になれるのだろうか。
(……味噌汁の匂い…)
不幸中の幸いとでも言うべきか、気持ち悪さはなかった。
頭がひらすらガンガンと痛むけれど、食べ物の匂いを嗅いでもそれは変わらなかった。
むしろ、グ~…と間抜けな音を響かせた私のお腹。
「…おいしそうだこれは…」
メニューは、鮭に納豆にキュウリのお新香。
それに味噌汁に、白米。
ザ・和食だ。
どれもこれもおいしそう。
体に良さそう。
…この家は、毎日こんなしっかりとした朝食が出るのだろうか。
(…、…こんなちゃんとした朝ご飯なんて久しぶり…)
そう思ったら、席につくことも忘れてぼんやりとしてしまった。