おうちにかえろう
放っておけない理由
…なんだよ。
いきなり張りつめた空気になったと思ったら、檜山が変なこと言い出して、朔兄がキレた。
全部が突然だったから、何も言えなかったじゃないか。
「…、…朔兄、あいつ行っちゃったけど」
「………。」
隣に目をやると、朔兄の機嫌はすこぶる悪かった。
むっとしたまま前を見据えているから分かりやすい。
朔兄は昔から、機嫌が悪くなるといつもこの表情になる。
「ここに住まそうとしてたんじゃないの?いいの?帰しちゃって」
そう言うと、朔兄は何も答えないまま椅子の背もたれにもたれかかって、天井を見上げていた。
その様子を見て、勝手にもれたのは溜息だった。
ほぼ同時に、朔兄も大きく息を吐いていた。
まるで、自分自身に呆れているかのように。
「…言っとくけど、今更後悔しても遅いからね」
「…、…泣いてると思う?美月ちゃん」
「檜山が泣くとこは笑うとこより想像出来ない」
真顔で即答すると、なぜか不思議そうな目を向けられた。
そんな顔されても、眉を上げることしか出来ない。
「俺は泣いてるとこしか想像出来ねーよ」
はーぁ、とまた、大きく溜息をついて、今度はテーブルの上に項垂れていた。