おうちにかえろう
「―――…」
朔兄は、驚くでもなく、ただ俺を見据えた。
考えが読めない漆黒の瞳に捕まって、動揺が膨らむ。
俺はどうして、こんなこと聞いたんだろう。
地雷踏んだかもしれない、なんて今更思ったって、遅いのに。
「………そんなんじゃねーよ」
そう言うと、立ち上がって食器を重ね始めた。
俺は、何も言い返せないまま、その様子を見つめていた。
“本当に?”
心の中に秘めた想いは、伝えられないまま。
「……美月ちゃんに謝んねーとな」
少し遅れて、「朔兄の顔も見たくないかもよ」と言った俺の言葉に、分かりやすく項垂れた朔兄はどう見てもいつもの朔兄で、
でも、やっぱりどこかいつもと違って見えたのはきっと…
「まぁ、ちょっと出しゃばりすぎたしな」
俺のせいなんだろう。