君に恋する物語
初めて君を見かけたとき、君はとても目立っていた。

僕は思わず足を止めていた。

君が土砂降りの雨の中、泣いていたから。

傘も差さずに、

濡れることも構わずに、

ただ一心に、

子供みたいに声を張り上げて、

泣いていたから。

ちらちらと君に好奇の目を向ける人はたくさんいた。

だけど誰一人足を止めたり、君に声をかけるものはなかった。

みんな関わり合いになりたくないとばかりに先を急ぐ。

世間は案外冷たいのだなと思った。

それは当たり前のことなのかもしれない。

僕も足を止めはしたけれど、君に声をかけたりしなかった。

冷たい雨を受け止める君自身もまた世界を拒絶しているように見えたから。

ただ僕の瞼の裏にはあの日の光景が焼き付いて離れない。

君が、泣いているあの姿が。

とてもきれいだと思ったから。
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