奪取―[Berry's版]
腰を屈め、てっぺんに唇をひとつ落として。反射的に、女性が喜多を見上げたことを良しとして、彼女の頤を捉え無理な体勢を承知で唇を奪う。彩ったばかりの唇が乱れることに抵抗を示し、女性が嫌がるのも承知の上の行動だ。数秒後に胸を押され、喜多は仕方なくと言う素振りで、女性を解放する。
「っもう。せっかくリップを重ねたのに、台無し」
「直ぐ行くの?」
「昨日は無理を言って抜け出してきたんだもの。今朝のミーティングに遅刻するわけにはいかないわ」
「歌手も大変だな」
鏡に映る女性は、数時間まで喜多の腕の中で声を上げていた人物とはまるで別人のようであった。そう、化粧によってあまりにも綺麗に整えられた顔は、テレビや雑誌で見かける彼女の仕事用の顔だ。
歌手として活躍する、卯月 春花|《うづき はるか》の顔だった。
「っもう。せっかくリップを重ねたのに、台無し」
「直ぐ行くの?」
「昨日は無理を言って抜け出してきたんだもの。今朝のミーティングに遅刻するわけにはいかないわ」
「歌手も大変だな」
鏡に映る女性は、数時間まで喜多の腕の中で声を上げていた人物とはまるで別人のようであった。そう、化粧によってあまりにも綺麗に整えられた顔は、テレビや雑誌で見かける彼女の仕事用の顔だ。
歌手として活躍する、卯月 春花|《うづき はるか》の顔だった。