奪取―[Berry's版]
喜多の従兄弟である箕浪は、小学生時期、とある事件に巻き込まれたことで、大勢の視線を恐れるようになっていた。唯一の心のよりどころは、従兄弟である喜多と年下の幼馴染の鈴音だけ。その鈴音に寄せる思いに、淡く甘い香りが漂い始めるのは必然だったのだろう。ふたりは最初からそうなるはずだったかのようにあたりまえに、恋人同士へと関係を変えた。周囲の祝福を受け、結納も済ませ、誰もがふたりの将来を疑わなかったある日。突然鈴音が姿を消した。
唯一無二の存在を失った箕浪は、更に自身を守る壁を厚く、厚くしていった。乱暴な口調と態度は怯えた子猫が牙を立てるよう、虚勢を張るため。前髪を伸ばし、背中を丸めるのは、遠慮ない他人の視線に関心を示さないため。
唯一無二の存在を失った箕浪は、更に自身を守る壁を厚く、厚くしていった。乱暴な口調と態度は怯えた子猫が牙を立てるよう、虚勢を張るため。前髪を伸ばし、背中を丸めるのは、遠慮ない他人の視線に関心を示さないため。